エムエスツデー 2022年10月号

計装豆知識

冷却塔 その1 印刷用PDFはこちら

BA(ビルディングオートメーション)の空調自動制御

はじめに

冷却塔ビルの屋上や工場の敷地内に設置されている冷却塔は、外気によって水を冷やす装置です。冷水を作り出す冷凍機や空気を圧縮するコンプレッサ、発電所などにある蒸気を水に戻す復水器などは、装置から熱を取出すための冷却水が必要です。温まった冷却水は装置に戻すために冷やさなければなりません。冷却塔は温まった冷却水の熱を外に放熱し冷やします。
この項では主にビル空調で使われる冷凍機用冷却塔について、その仕組みと自動制御について解説します。

冷却塔とは

冷却塔は冷却水を外気と接触させ、水が気化するときの蒸発熱を利用して温められた冷却水を冷やす装置です。冷却水の冷却効率は外気の湿球温度に依存します。雨が降っていて湿球温度が高い場合は、同じ乾球温度でも冷却効率が下がります。このように外気の状態によって冷却効率が変わりますので、天候、時間帯、季節、地域によっても冷却効率に差が出ます。
冷却塔には冷却水が直接外気に触れる開放形冷却塔(図1)と、冷却水が冷却塔の中の配管中を通る密閉形冷却塔(図2)があります。密閉形冷却塔は散布水の蒸発熱で冷却水を冷やすため、開放形冷却塔に比べ冷却効率は落ちますが、冷却水が外気に触れないので、開放形冷却塔に比べ水質の悪化が抑制されます。

図1 開放形冷却塔
図1 開放形冷却塔

図2 密閉形冷却塔
図2 密閉形冷却塔

また冷却塔には、上から落下してくる冷却水または散布水に下から空気を当てる向流式と、横から直角に空気を当てる直交流式があります。
冷凍機と冷却塔が1対の場合など建物の規模が比較的小さい場合は、向流形冷却塔(図3)が多く、冷凍機が複数台あるような規模が大きい場合は、冷却塔を並列に設置できる直交流形冷却塔(図4)が多く使用されています。

図3 向流形冷却塔の例
図3 向流形冷却塔の例
図4 直交流形冷却塔の例
図4 直交流形冷却塔の例

 

冷却塔の水質管理

開放形冷却塔の冷却水または密閉形冷却塔の散布水は、直接外気に触れるため適切な水質管理と定期的な点検を行わないと、以下のような障害が起こります。
●冷却水が蒸発により濃縮され溶存酸素濃度が高まり、配管の腐食の原因となる。また都市部では
 空気中の排気ガスに含まれる酸化物が冷却水に溶込むことにより、冷却水が酸性化し腐食の原因に
 なる。
●冷却水が蒸発により濃縮され溶込んでいたカルシウムやマグネシウムが飽和度を超えて結晶
 として析出され配管に付着堆積する。
●微生物や藻類が繁殖し粘性のあるスライムが発生し、ストレーナやフィルタの目詰まりを
 引き起こす。
●レジオネラ菌など人体に悪影響のある病原菌が繁殖する。なおレジオネラ菌などの病原体汚染を
 防止するために、ビル衛生管理法では冷却塔の使用に関して以下の事項が義務付けられています。
 ・冷却塔に補給する水は水道水質基準を満たす水を使用すること。
 ・冷却塔使用開始時に清掃を行うこと。また、使用期間中は1か月に1度の点検を行い、
   必要に応じて換水、清掃を行うこと。 
 ・1年に1度、冷却塔および冷却水配管の清掃を行うこと。

冷却水の温度制御

一般的に、冷凍機の運転が夏場だけの場合は、図5のように冷却塔ファンのON/OFFだけで冷却水の温度制御を行います(ファンを常に運転する場合もあります)。
最近のオフィスビルでは冬場も冷房負荷があり冷凍機を運転します。その場合は外気で冷却水が過冷却にならないようバイパス用の二方弁や三方弁を使用して冷却水温度が一定になるよう制御を行います。
冷却水ポンプと冷却塔との設置場所に高低差があまりないときは、図6のように3方弁を使用します。冷却水ポンプと冷却塔に高低差があり(たとえば冷凍機と冷却水ポンプが地下階にあり、冷却塔が屋上に設置されている場合など)冷却水ポンプの吐出側に十分な静水頭(圧力)があるときは、主に2方弁が使用されます(図7)。

図5・図6・図7

次回は冷却塔の自動制御ついて詳しく解説します。

【(株)エム・システム技研 BA事業部】


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