計装豆知識

BA(ビルディングオートメーション)の空調自動制御
冷却塔 その2

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(株)エム・システム技研 BA事業部

はじめに

前回は主にビル空調で使われる冷凍機用冷却塔について、その仕組みと水質管理、温度制御について解説しました。今回は冷却塔の自動制御について、より詳しく解説します。

冷却塔

冷却塔の自動制御

図1 開放形直交流式冷却塔の構造

図1 開放形直交流式冷却塔の構造

1. 冷却水の流れ

図1に一般的な開放形直交流式冷却塔の構造を示します。冷凍機で暖められた冷却水は、冷却塔上部から充填材の間を通り、空気に触れながら蒸発熱で冷やされ下部水槽に溜まり、再び冷凍機へ送られます。充填材は凹凸のある樹脂製の板を何層にも重ねた構造をしており、冷却水が空気に触れる面積と時間を多くして冷却効率を高める役割を果たします。


2. 冷却水の温度制御

冷却塔出口側の配管に取付けられた測温抵抗体で冷却水温度を検出し、温度調節器が三方弁と冷却ファンの制御を行い冷却水温度を一定に保ちます。
三方弁と冷却ファンの動作は通常図2のように設定します。たまに図3のような設定も見受けられますが、この場合は外気の湿球温度が低いときに冷却ファンが頻繁にON/OFFを繰り返し、ファンベルトやプーリーの摩耗を早めることになりますのでおすすめできません。

図2

図2

図3

図3

図4

図4

最近は冷却ファンをインバータで駆動し制御性と省エネルギーを両立する制御も行われています。その場合は図4のような動作に設定します。
冷凍機は冷却水温度が低いほど効率が上がりますが、過度に外気の湿球温度が低いときは、冷凍機の冷媒圧力が低下して冷凍機自体が停止します。一般的には冷却水温度調節器の温度設定は20~25℃前後に設定します。


3. ブロー制御

冷却水にはいろいろな不純物が含まれています。冷却塔は冷却水を外気で蒸発させていますので、長時間運転している間に冷却水が濃縮されてきます。冷却水が濃縮されると冷却水に溶け込んでいたカルシウムやマグネシウム、シリカなどの不純物が飽和濃度を超えて析出して固化し、配管や冷却塔各所に堆積します。また、塩分濃度が増すことによる腐食も進みます。さらに藻類や細菌が繁殖してスライム状になり、冷却水の流れを阻害する原因になります。
冷却水の濃縮を防止するためには、濃縮された冷却水を新しい水に入替える必要があります。これを自動で行うのがブロー制御です。冷却水の濃縮度が上昇するとボール弁を開き上水を給水します。あまった冷却水はオーバーフロー菅から排出されます。冷却水の濃縮度が一定値まで下がるとボール弁が閉じ給水が止まります。冷却水の濃縮度は冷却水の導電率を計測して判断します。導電率調節器は冷却水の導電率が設定値以下になるようボール弁を開閉して補給水量を調節します。日本冷凍空調工業会標準規格では冷却水導電率を80[mS/m(ミリジーメンス/メートル)](25℃)以下と定めています。


4. 凍結防止制御

冬場は停止中の冷却塔に溜まった冷却水が凍結する恐れがあります。
冷却水の凍結防止は凍結防止用温度調節器が電気ヒータを制御して行います。通常は冷却水温度が3℃以下になると電気ヒータをONにし、5℃になるとOFFになるような設定にします。また電気ヒータの空焚きは火災の原因になりますので、必ず水位検出レベルスイッチで電気ヒータのインターロックを取ります。


5. 冷却水レベル制御

冷却水は蒸発によって水量全体が減少します。また冷却水ポンプの軸受けからは焼き付け防止のため、常に冷却水が漏洩しています。ボールタップはこれら冷却水の減水分を補給し冷却塔の水位を一定に保つ働きをします(図5)。

図5

図5

密閉形冷却塔の凍結防止対策

冬場の密閉形冷却塔の場合、冷却コイルが凍結で破裂する重大事故をおこす恐れがあります。そのため中央監視装置で外気温度を監視し、外気がある温度以下になった場合(通常は5℃以下)、強制的に三方弁を50%開き冷却水ポンプを運転し、冷却水が凍結しないよう冷却コイルに冷却水を循環させます(図6)。


図6

図6

図7

図7

省エネルギー制御

1. 冷却水変流量制御

空調用の冷凍機は季節や時間帯によって負荷が変動します。定流量の冷却水ポンプでは低負荷時に冷却水が流れすぎて、冷却水冷凍機出口温度が下がる傾向にあります。冷却水変流量制御ではインバータ冷却水ポンプで流量を可変して、冷凍機出口の冷却水温度が一定になるよう制御し、低負荷時の冷却水ポンプの省エネルギーを実現します。なおインバータの最小回転数は、冷凍機の最小冷却水量を確保できる回転数に設定する必要があります(図7)。


2. フリークーリング

病院やデータセンターなどは年間を通して冷房負荷があり冷凍機を運転しています。また最近のオフィスビルはコピー機やパソコンなどの冷房負荷が増え、冬場でも午後になると空調機が冷房モードになる場合があります。フリークーリングは冷凍機のかわりに冬場の外気を利用して冷却塔で冷水を作る運転方法です。フリークーリング運転中は冷凍機を運転しないので省エネルギーになります。密閉形冷却塔を使用する場合は、熱交換器を介して外気で冷やされた冷却水から冷水を作ります。開放形冷却塔を使用する場合は、冷却塔で冷水を直接冷やします。図8に密閉形冷却塔で冷凍機を利用する通常運転を、図9にフリークーリング運転のシステム図を示します。

冷凍機を利用する通常運転とフリークーリング運転の切替えは、配管中の切替えバルブを操作して水の流れを変えて行います。年間スケジュールを決めて手動で切替えを行う場合と、外気湿球温度を計測して自動で切替えを行う場合があります。

図8 冷凍機運転(通常運転)

図8 冷凍機運転(通常運転)

図9 フリークーリング運転

図9 フリークーリング運転


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