規格/標準

エムエスツデー 1995年5月号

計装豆知識

SI単位の話(3)印刷用PDFはこちら

新計量法における法定計量単位の切換えに伴う問題点として、圧力の単位についてはすでに説明しました。今回はその他の単位について説明します。

力の単位

前回説明したように、SI単位ではニュートン(N)を使用するので、従来使用していた重量キログラム(kgf)は使用できなくなります(1999年10月より)。したがって、引張り試験機などは、ニュートン目盛に変更することが必要となります。このときの換算率は1kgf = 9.81N です。しかし秤(はかり)は、重量を測定して質量を表示しているわけですから、変更の必要はありません。ただし、ばねばかりやストレーンゲージを使用する秤(はかり)は、要求精度によっては重力の加速度の補正が必要です。

なお、CGS単位であるダイン(dyn)は、今年の10月から使えなくなります。

仕事・電力量・熱量の単位

これらは、言葉は違いますが、すべてエネルギーであり同じものです。計量法では、“仕事は1ニュートンの力が、その力の方向に物体を1メートル動かすときの仕事”と定義されており、これを1ジュール(J)または1ワット秒(W・s)としています。一方、電力量や熱量の定義は、それぞれ“1ジュールの仕事に相当する電力量”、“1ジュールの仕事に相当する熱量”とされています。

上記により、従来仕事や熱量の単位として使用されていた重量キログラムメートル(kgf・m)やカロリー(cal)は、1999年10月以降は使用できなくなります。これらとジュールとの間の換算表を下に示します(有効数字3桁)。

エネルギーの単位の換算表

kJ kW・h kgf・m kcal
1 2.78×10-4 1.02×102 0.239
3.6×103 1 3.67×105 8.60×102
9.81×10-3 2.72×10-6 1 2.34×10-3
4.18 1.16×10-3 4.27×102 1

ただし、カロリーは栄養関係ではよく使用されている単位なので、新計量法では“人もしくは動物が摂取する物の熱量または代謝により消費する熱量の計算”に限って1999年以降も使用できることになっています。

なお余談ですが、従来の計量法の定義では、1カロリーは4.18605Jだったのですが、新計量法では4.184Jと0.05%小さくなっています。これはカロリーの定義と関係があるのですが、説明は省略します。

特定の用途に限って使用できる単位

上記のカロリーのように、特定の用途に限って使用できる非SI単位があります。主なものをあげると下記の通りです。

長さ: 海里(海面)、オングストローム(光学・結晶学)
質量: カラット(宝石)、もんめ(真珠)、トロイオンス(金貨)
面積: アール、ヘクタール(土地)
圧力: トル(医療)、水銀柱メートルなど(血圧)

CGS単位

CGS単位は、今回の新計量法では、ほぼ削除となりましたが、粘度の単位ポアズ(P)、動粘度の単位ストークス(St)は、今後も使用できます。

SI単位との換算は下記の通りです。
 1ポアズ(P)=0.1パスカル秒(Pa・s)
 1ストークス(St)=10−4平方メートル毎秒(m2/s)

その他の単位

周波数の単位には、従来サイクル毎秒(c/s)がよく使用されていましたが、1997年10月以降はヘルツ(Hz)でなければいけないこととなります。また、音圧レベルはホンに代わってデシベル(dB)となります(1997年10月以降)上記はいずれも換算率は1です。


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