規格/標準

エムエスツデー 2007年4月号

計装豆知識

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今月も、先月に引き続きIECスキームに関する事項のご紹介です。

1.IECExスキームとは

IECExスキーム注1)(以下Exスキームと略称)とは、IEC内に設けられたCAB(Conformity Assessment Board:適合性評価評議会)傘下の3つのIECスキームの一つで、IEC防爆電気機器規格適合試験制度です。

ちなみに、他の2つのスキームは、先月テーマとして取り上げたIECEE 注2)(CBスキーム)およびIECQ 注3)(IEC電子部品品質認証制度)です。

Exスキームの目的は、爆発性雰囲気内で使用される機器の安全性を維持するとともに以下の内容を実現することによって、結果的に国際取引およびサービス(保守、修理)を促進することにあります。

1) 試験および認定のコストを引き下げる

2) 市場に対象機器が供給されるまでの時間を短縮する

3)適合性審査過程の国際的信頼性を確保する

4)適合性評価データの一元化を実現する

5)機器およびサービスへの適合認定に対する国際的信頼性を確保する

2.Exスキームと日本の防爆認定

日本も遅ればせながら、ようやく2005年9月にExスキームに加盟しました。また、2006年末に産業安全研究所の「工場電気設備防爆指針」が改定され注4)、国際規格IEC60079シリーズとの整合性が高くなったため、外国でExスキームによって適合認定された機器について、ほぼそのまま日本でも適合認定を受けることが容易になりました。ただし現状では、国内法の整備が遅れているために、IEC60079で認められている防爆の種類すべてが日本でも認められるわけではありません(たとえば「タイプn防爆」は、日本ではまだ認められていません)。また残念ながら、国内にはExスキームに則って機器の適合認定を行える機関(ExCB)がまだ存在しません。したがって当面は、海外でExスキームによって適合認定を受けた機器の防爆認定を日本国内で受ける際に、型式検査のみが免除される、という状況が続くものと考えられます(図1)。

図1 IECExスキーム申請の流れ

3.ExスキームとATEX指令

Exスキームでは、機器に関する適合審査だけでなく、製造業者に対する工場監査も実施されます。この点は、CEマーキングの中の一つである防爆機器指令(ATEX指令)に類似しています。ただし、ATEX指令では、EU加盟国間の要求事項の差異を認めていないため、いずれか1か国でATEX指令適合品として認定を受けた機器については、他のEU加盟国はそのまま受け入れる必要があります。これに対しExスキームでは、加盟国の個別の追加要求事項(National Differences)を認めているため、Exスキームで適合認定を受けた機器については、国ごとに別途審査が行われる場合がある注5)という点が異なります。

4.Exスキームの今後

Exスキームでの防爆認定が始まった2003年には、その認定数は全世界でわずか12件でしたが、2004年に105件、2005年に270件、2006年には624件と毎年2倍以上の伸びを示しています。使用されているすべての防爆製品の数と比べればまだまだ少ない数ですが、今後も認定数の増加傾向が続くものと考えられます。

〈参考文献〉http://www.iecex.com/

注1)IEC Scheme for the Certification to Standards for Electrical Equipment for Explosive Atmospheres
注2)IEC System for Conformity Testing to Standards for Safety of Electrical Equipment
注3)Quality Assessment System for Electronic Components
注4) 法律面での改訂は未だ行われていません。この件について は別の機会に改めてご紹介する予定です。
注5)現時点でExスキーム適合品をそのまま適合品として扱っ ている国は、オーストラリアとニュージーランドの2か国だけです。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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