エムエスツデー 2020年4月号

計装豆知識

HDMI製品の開発プロセスについて印刷用PDFはこちら

HDMI技術対応製品開発の各プロセスについて、概要を簡単にご説明します。

HDMI®とは

HDMIは、High-Definition Multimedia Interface の頭文字をとったインタフェースに関する規格です。その身近な用途は、テレビ番組を録画するレコーダと、映像を表示するテレビの間の映像・音声・制御信号といった複数の情報を1本のケーブルでやり取りすることです。さらにHDMIは、AV用の情報のやり取りだけではなく、パソコンに代表されるようなIT機器の情報のやり取りにも使用できます。

AV用のインタフェースとして、従来は、コンポジット映像端子(通称:ピン端子)、セパレート映像端子(通称:S端子)、コンポーネント映像端子、D映像端子(通称:D端子)といったコネクタがありました。これらはすべてアナログ信号用でした。また、IT機器用としては、VGA端子(通称:D-sub15ピン)、DVI端子といったコネクタがありました。DVI端子の一部は、アナログ信号用でした。AV用、IT機器用共に、アナログ信号の映像の劣化、ケーブルの本数や配管時の太さなどに問題をもっているほか、音声情報については、映像情報とは別のケーブルで送信する必要がありました。

HDMIは、これらの問題の解決方法の一つといえます。

HDMIの概要については下記サイトをご参照ください。
サンワサプライ(株)「HDMIとは」
https://www.sanwa.co.jp/product/cable/hdmi/howto/index.html
(参照 2020年1月31日)

HDMI Licensing Administrator, Inc.とは

HDMI技術を用いた製品を開発したい場合は、技術仕様にまずアクセスしなければなりません。そのためには、HDMI Licensing Administrator, Inc. (HDMI LA)という業界団体の会員になる必要があります。この団体は、全世界で1,800社以上の会員企業で構成され、日本では179社が参加しています。エム・システム技研もその一員です(2019年12月現在)。

関連する組織として、HDMI FoundersとHDMI Forumがあり、前者がHDMI Ver.2.0以前を、後者がVer. 2.1以降の技術仕様の策定を行っています。HDMI LAは、両者から任命された、HDMI仕様のライセンスを管理するエージェントという位置づけになります。HDMI Founders が7社(日本企業4社を含む)で構成されていたのとは異なり、HDMI Forumはオープンな業界団体であり、家電、PC、モバイルデバイス、ケーブルなどの世界的な大手メーカー90社以上で構成されており、HDMIの新たなバージョンの策定とHDMI製品のエコシステムを拡大することを使命としています。

HDMI製品の種類

HDMIに対応する製品は、下記の4種類に分類されます。対象製品が、この4つのどれに属するかを決定する必要があります。

規格上の分類 概要
ソース レコーダやパソコンなどの表示内容を出力する機器
シンク テレビ、パソコンモニタ、プロジェクタなどの映像を表示する機器
リピータ ソース、シンク間の中継器
ケーブル ソース、シンク、リピータ間を結ぶケーブル

自社製品にHDMI LAの確認を受ける手順

この場合は、下記の様な作業が必要となります。

① HDMI LAに入会し、HDMI Adopter(採択者)資格を得る。
② 自社製品が必要とするHDMI仕様にアクセスする。(*1)
③ 技術仕様に沿って、製品を開発する
④ 試験仕様に沿った自己評価を実施する。
⑤ 認定テストセンターで試験を実施する。
⑥ 認定テストセンターから提供を受けた資料を、HDMI LAのWebサイト内にある会員エリアに登録し、HDMI LAの確認を受ける。

ATCでの試験とは

認定テストセンター(⑤⑥参照)は、正式にはAUTHORIZED TEST CENTERS (ATC)と呼ばれます。ATCは、全世界に17社あり、そのうち3社は日本にあります(2019年12月現在)。

ATCでは、CTS(Compliance Test Specification)と呼ばれる試験仕様に沿って試験がおこなわれます。試験完了後、ATCからは、「CONFIRMATION OF HDMI ATC TESTING」というドキュメントとテストレポートが提供されます。この試験は必要最低限の内容であり、ATCはそれを確認(CONFIRMATION)しただけになります。そのため、たとえ合格したとしても、他の製品との相互接続性がATCによって保証される訳ではなく、それについては各メーカーが責任をもつ必要があります。

HDMIのバージョンの記載について

HDMIには、複数のバージョンが存在し、それぞれ主な解像度、機能(用途)、伝送速度が異なります。しかし、仕様書や取扱説明書に、たとえば「HDMI 2.1対応」といったようにバージョン番号を単独で使用し、製品やインタフェースの機能を定義することは禁止されているので、注意が必要です(具体的な記載ルールについては、HDMI LAが提供する専用のガイドラインにて説明されています)。

HDMI Adopterの年会費とロイヤリティについて

HDMI Adopterは、その資格を維持するために、年会費とロイヤリティを支払う必要があります。年会費とロイヤリティの単価は、HDMI Adopter資格を得る際のHDMI LAとの契約で定められています。

ロイヤリティは、HDMI LAの確認を受けた製品の出荷台数に定められた単価を乗じた金額となります。HDMI Adopterは、生産台数の報告と支払いを、四半期ごとに行う必要があります。

エム・システム技研のHDMI LA確認済 製品紹介

リモートグラフィックパネル リモートGP®(形式:RGP30)(写真1)は、スイッチ、ランプ、メータなどのグラフィック表示とIoT機器の表示画面を同一画面上に編集して表示できます。 HDMIポートを装備しているため、コストパフォーマンスに優れた市販の大形パネルやタッチパネルなどが使えます。

写真1 RGP30 表示されるグラフィック画面

<参考文献>
HDMI Home  https://www.hdmi.org/

(*1)会員資格には、HDMI 1.4b AdopterとHDMI 2.0 Adopter の区別があります。
    HDMI 2.0やHDMI2.1の仕様にアクセスするためには、HDMI 2.0 Adopterの資格を得る必要があります。

HDMI、HDMI High-Definition Multimedia Interface、およびHDMIロゴは、 HDMI Licensing Administrator, Inc. の商標または登録商標です。

【(株)エム・システム技研 設計部】


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