エムエスツデー 2019年1月号

計装豆知識

改正RoHS(RoHS2)指令[6物質から10物質へ]印刷用PDFはこちら

2019年7月22日から制限物質が10物質に拡大されます。

RoHS指令については本欄ですでに数回ご紹介して参りましたが、2019年7月22日からは制限物質が10物質に拡大されるため、今回は、欧州RoHS指令の過去からの流れを再度整理するとともに、7月から追加される物質を含めて簡単にご説明します。

RoHS指令の始まり

RoHS指令(2002/95/EC)は、EU域内で流通する電気・電子機器(EEE)(*1)に特定の有害物質の使用を制限する指令として2003年2月13日のEU官報で公布され、2006年7月1日に施行されました。

1回目の改正 RoHS1指令→RoHS2指令
(対象製品の拡大とCEマークの製品貼付)

RoHSの改正案が2008年12月に欧州委員会から公表されて以降、2年にわたり協議が行われ、2011年7月1日にEU官報で公布され、7月21日に改正RoHSが発効しました。これにより、旧RoHS指令(2002/95/EC 通称RoHS1指令)は2013年1月2日に廃止となり、翌1月3日から改正RoHS指令(2011/65/EU 通称RoHS2指令)に置き換わりました。

・改正ポイント

(1)対象製品の拡大
RoHS1で適用が除外されていたカテゴリ8(医療用機器)、カテゴリ9(監視・制御機器)が対象となり、新たにカテゴリ11として「その他の電気・電子機器」が追加されました。

(2)CEマークの製品への貼付(適合宣言)
1回目の改正でCEマーキング制度が適用され、モジュ-ルA(*2)(内部生産管理)に従いEU市場へ上市する前にCEマークの貼付が必要となりました。また、適合宣言書、技術文書の作成及び販売記録については10年間の保管が義務づけられています。

今回の改正 RoHS2指令 + (EU)2015/863
(制限物質が6物質から10物質に拡大)

RoHS2の制限物質を定めた2011/65/EUのAnnexII(付属書II)(*3)を置き換える官報「(EU)2015/863」が2015年6月4日に公布され、2019年7月22日から適用となります。

・改正ポイント

(1)RoHS制限物質の追加
RoHS2の制限6物質に4物質(DEHP、BBP、DBP、DIBP)が追加され、合計10物質になりました(表1の朱記部分参照)。

表1 RoHS2指令の一部改正(制限物質が6物質から10物質に拡大)
  RoHS1
(2002/95/EC)
RoHS2
(2011/65/EU)
RoHS2
(2011/65/EU)
+ (EU) 2015/863
2006/7/1~
2013/1/2
2013/1/3~
2019/7/21
2019/7/22~
対象製品 カテゴリ1~7、10 カテゴリ1~11 (全ての電気電子機器)
適用除外用途
(Exemption)
Annex AnnexIII (RoHS1 Annex)
AnnexIV (カテゴリ8、9のみ)
RoHS適合
証明方法
言及なし CE適合宣言書および技術文書作成保管
制限物質
及び
最大許容濃度
(ppm)
6物質 10物質
1000 1000
水銀 1000 水銀 1000
カドミウム 100 カドミウム 100
六価クロム 1000 六価クロム 1000
ポリ臭化ビフェニル類(PBB類) 1000 ポリ臭化ビフェニル類(PBB類) 1000
ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDE類) 1000 ポリ臭化ジフェニルエーテル類(PBDE類) 1000
  フタル酸ビス (2-エチルヘキシル)(DEHP) 1000
フタル酸ブチルベンジル (BBP) 1000
フタル酸ジブチル (DBP) 1000
フタル酸ジイソブチル (DIBP) 1000

(2)カテゴリ別の規制開始時期
今回追加された4物質(合計10物質)の規制開始時期は、表2のとおりカテゴリ毎に定められています(*4)

表2 カテゴリ別の規制開始時期
カテゴリ(付属書Ⅰ) RoHS1
(2002/95/EC)
RoHS2
(2011/65/EU)
RoHS2
(2011/65/EU)
+ (EU) 2015/863
1 大型家庭用電気製品 2006年7月1日
適用開始
2013年1月3日
CEマーク
貼付開始
2019年7月22日
制限物質拡大
2 小型家庭用電気製品
3 IT機器及び
遠隔通信機器
4 民生用機器
5 照明機器
6 電動工具
7 玩具、レジャー、
スポーツ機器
8 医療用機器 医療用機器 2014年7月22日
適用開始
2021年7月22日
制限物質拡大
体外診断用医療機器 2016年7月22日
適用開始
9 監視・制御機器 監視及び制御機器 2014年7月22日
適用開始
工業用監視・制御装置 2017年7月22日
適用開始
10 自動販売機 2006年7月1日
適用開始
2013年1月3日
CEマーク
貼付開始
2019年7月22日
制限物質拡大
11 上記カテゴリに入らないその他の電気・電子機器 2019年7月22日
適用開始

エム·システム技研の取組み

エム・システム技研では、環境汚染の防止、循環型社会の実現を目指し、環境保全活動に取り組んでいます。今後も環境に配慮した製品を提供するために、グリーン調達を推進し、環境負荷の低減を目指して参ります。

なお、今回の10物質対応については、2019年1月から順次対応を行っています。また、RoHS指令対応製品の表示マーク(*5)は、10物質対応が確認できた製品から、従来の6物質対応マークに替わって10物質対応マークになります。 6物質対応マーク 10物質対応マーク

(*1)電気・電子機器(EEE):交流1000ボルト、直流1500ボルトを超えない定格電圧で使用するよう設計され、
    そのような電流および電磁場を発生、伝導、測定するための機器を指します。
(*2)モジュ-ルA:自己宣言により必須要求事項への適合を宣言します。生産された製品が指令の要求に適合
    することを示すテクニカルファイルを作成し、生産された製品の技術文書と指令の要求への適合を保証
    するための全ての手段を採ります。
(*3)AnnexII(付属書II):第4条1項に定める制限物質および均質材料中の重量比での最大許容濃度
(*4)カテゴリごとに規制開始日が違うため注意が必要です。カテゴリ11については、2019年7月22日から
    規制対象となりますが、規制の開始段階から今回追加となったフタル酸系4物質を追加した10物質で対応
    する必要があります。
(*5)対応状況についてはエム・システム技研ホームページの仕様書検索画面にて表記する予定です。

【(株)エム・システム技研 品質保証部】


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