エムエスツデー 1996年10月号

計装豆知識

電源配線が要らない2線式伝送器印刷用PDFはこちら

2線式伝送器では、電流出力信号からアンプ駆動用電源を取ることにより、電源配線を省略した伝送方式を採用しています。2線式伝送方式は、電子式計装システムの発展とともに、まず差圧伝送器に採用されました。差圧伝送器は、一般に広いプラント・サイトに点在設置されるので、電源配線を使わなければ計装工事費が大幅に節約できるためです。現在では、熱電対、測温抵抗体、mV、パルス、ロードセル、CT、PTなど広い範囲の各種の入力信号に対応する2線式伝送器が使われています。次世代の計装用デジタル伝送方式であるフィールドバスでも、信号線に電源を乗せる2線式を採用しています。

2線式伝送方式の原理

図1 2線式伝送方式の等価回路

図1に2線式伝送方式の等価回路を示します(等価回路とは、原理を理解しやすくするために置き換えて表現した、同等の単純な回路のことです)。

回路には、直流電源装置から24V DCの一定電圧が加えられています。2線式伝送器と負荷抵抗(受信機器の入力抵抗250Ωなど)は直列に接続されています。この回路において、2線式伝送器は自身の入力信号(差圧伝送器の場合は差圧)と4~20mA DCの出力信号が正比例するように、内部抵抗を回路で操作します。

見方を変えれば、2線式伝送器は「自身の電圧降下V2」を「負荷抵抗による電圧降下V1」と「供給電圧24V」の差に等しくなるように操作していることになります。

許容負荷抵抗

次に、この回路で負荷抵抗が何オームまで接続できるかを考えます。2線式伝送器には、その内部回路を駆動するための電圧が必要です。たとえば、エム・システム技研のロードセル変換器(形式:BLC)では13V必要です。

図1では、電源電圧24Vから2線式伝送器の所要最小駆動電圧13Vを差し引いた電圧11Vまで負荷抵抗での電圧降下として許容できます。この回路で負荷電流20mAのとき11Vになる抵抗値は、
11V ÷ 20mA = 550Ωですから、この値が最大許容負荷になります。

2線式伝送器の所要最小駆動電圧は機種ごとに異なりますから、使用時にはメーカーの仕様書で確認する必要があります。

図1の例では、直流電源装置の供給電圧を24V DCとしていますが、大多数の2線式伝送器では、45V以上まで使用できます。

ディストリビュータ

ディストリビュータは、エム・システム技研の2線式伝送器用電源装置の商品名です。1台の直流電源装置を使って複数の2線式伝送器を駆動する目的をもつ分電盤(ディストリビュータ)がその原形です。現在のディストリビュータには、基本的な直流電源の機能に加えて、信号の絶縁や開平・リニアライズなどの演算を1台で処理できるものも用意されています。


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