2008年8月号
エムエスツデー 2008年8月号
CT(Current Transformer)について(2)
先月に引き続き、CT(Current Transformer)についてご説明します。
1.精度について
CTの特性を示す重要なファクターとして「変流比誤差(比誤差)」と「位相角」があり、JIS C 1731-1で以下のように定義されています。
・ 変流比誤差(比誤差):真の変流比が公称変流比に等しくないことから生じる誤差のことで、次の式で表される。
・ 位相角:一次電流ベクトルと二次電流ベクトルとの間の位相差。ベクトルの方向は理想的な変流器の位相角を零とする方向に選び、二次電流ベクトルが進む場合の位相角を正とし、分 注)で表す。
真の変流比とは、実際に一次巻線に通電した電流と、二次巻線から供給される電流との比であり、その値は実際に測定して求めます。公称電流比とは、定格一次電流と定格二次電流との比のことです。
JISでは、各確度階級によって表1、表2に示すように比誤差と位相角の限度が定められており、中間の一次電流の比誤差および位相角の限度は、補間法によって定めることになっています。
表1 標準用変流器の比誤差及び位相角の限度
確度階級 | 比誤差〔%〕 | 位相角〔分〕 | ||||||||
0.025 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 1.2 In | 0.025 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 1.2 In | |
0.1級 | ±0.2 | ±0.16 | ±0.12 | ±0.1 | ±0.1 | ±10 | ±8 | ±6 | ±5 | ±5 |
0.2級 | ±0.6 | ±0.5 | ±0.3 | ±0.2 | ±0.2 | ±30 | ±25 | ±15 | ±10 | ±10 |
備考 In は、定格周波数の定格一次電流を表す
表2 一般計測用変流器の比誤差及び位相角の限度
確度階級 | 比誤差〔%〕 | 位相角〔分〕 | ||||
0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | 0.05 In | 0.2 In | 1.0 In | |
0.5級 | ±1.5 | ±0.75 | ±0.5 | ±90 | ±45 | ±30 |
1.0級 | ±3.0 | ±1.5 | ±1.0 | ±180 | ±90 | ±60 |
3.0級 | 0.5 In ~ 1.0 In ±3.0 | 0.5 In ~ 1.0 In ±180 |
備考 In は、定格周波数の定格一次電流を表す
2.クランプ式交流電流センサ
近年、電力監視システムの構築に、クランプ式交流電流センサを用いる例が多くなっています。クランプ式交流電流センサを用いれば、既存の設備に設置する場合に、再配線作業が不要になり(図1参照)、通常のCTを用いる場合に比較して作業工程を大幅に減らすことができます。
クランプ式交流電流センサは、計測・制御用としての使用容易性と高信頼性を追求したCTです。クランプ式交流電流センサの二次電流は、JISで定められた定格ではなく、高変流比でmAレベルの出力電流を生ずる製品が多く、エネルギー計測ユニットなどで多数用いられています。
エム・システム技研では、通常のCTを用いた信号変換器(形式:LTCE、LTWT)やリモートI/O(形式:R3-CT4、R3-WT4)のご提供はもちろんのこと、クランプ式交流電流センサを用いた信号変換器(形式:M6SCTC)やリモートI/O(形式:R3-CT8A、R3-WTU)もご提供しています。また、エム・システム技研のクランプ式交流電流センサ(図1)は、二次側開放時に高電圧が発生しないように保護用素子(過電圧クランプ素子)を内蔵しているため、安心してご使用いただけます。
〈参考文献〉
JIS C 1731-1 計器用変成器−(標準用及び一般計測用)第1部:変流器
注)分は、1度の1/60を表す単位