エムエスツデー 2007年7月号

計装豆知識

避雷器の寿命印刷用PDFはこちら

避雷器は、落雷で雷サージが発生するとすばやく動作し、被保護側の機器を守りますが、通常はとくに動作しない機器です。そのため、被保護側の機器の故障や異常発生の際に、初めて避雷器の寿命を意識するのが通常だと思われます。しかし、避雷器を構成している各部品は、繰り返しの雷サージによって徐々に劣化するため、寿命があります。厄介なのは、その寿命が自然現象である雷サージの回数と大きさに依存することです。寿命を意識していても、いつ交換したらよいかを判断するのは、大切で難しい問題です。そこで今回は、避雷器の寿命について説明します。

避雷器の内部構成 

エム・システム技研の主な避雷器は、大電流を処理する放電管と応答速度に優れた電圧制限素子(バリスタやダイオード)の2段構えで、被保護機器へ加わるサージ電圧(制限電圧)を低く抑えています(図1)。

図1 避雷器の構成

 

放 電 管

図2 放電管の断面図

放電管は、冷陰極管の一種で、ネオンサイン、蛍光灯用グローランプなどの仲間です(図2)。

一定以上の電圧(雷サージ)が電極間に加わると放電現象が起こり、絶縁されていた電極間が短絡されてサージ電流が流れます。バリスタと異なり短絡時の電極間の電圧が10~数10Vと低いため、発熱が小さく、体積も小さくできます。

放電管には放電電流耐量が規定されており、放電できる電流とその放電時間は反比例の関係にあります。そのため放電電流が増えれば増えるほど、放電できる時間は短くなり、その時間を超えて放電が続くと放電管は破壊されてしまいます。また、放電管の絶縁抵抗は、通常1010Ω程度の値をもっていますが、放電の際に放電管の内壁に電極材料が融解して付着するため、徐々に絶縁抵抗が劣化していきます。

落雷の大きさは様々なので、一概に被雷回数によって放電管の寿命を規定することはできませんが、被雷回数が多くなるのに伴って放電管の劣化が進んでいくと考えられます。

電圧制限素子

図3 バリスタの構造模式図電圧制限素子として、酸化亜鉛(ZnO)バリスタやダイオードが主に使われます。

ZnO バリスタは、主成分である酸化亜鉛に数種類の添加物質を加え、千数百度で焼成して造られます。

1つのZnO結晶粒当たり約3Vの立ち上がり電圧(バリスタ電圧)が得られます。なお、図3に示すようにZnO 結晶粒がブロック上に結合している構造であるため、直列に積み上げることでバリスタ電圧を、また電極間の面積を変えることでサージ電流耐量を制御できます。

ZnO バリスタは、その構造上、雷サージを繰り返して印加すると劣化が進みます。具体的には、バリスタ電圧の低下と漏れ電流の増加が起こります。これは、雷サージのエネルギーにより境界(高抵抗)層の弱い部分が徐々に破壊(短絡)されていくためで、最終的には電極間が短絡状態になります。

ダイオードについても、過大な電流が加わると接合部が局所的に発熱し、接合部が融解することで短絡状態になります。

避雷器の劣化

図4 寿命モニタ機能付 電子機器専用避雷器(形式:MDPA-24) 以上のように、雷サージによるストレスが繰り返し各避雷素子に加わることで部品の劣化が進み、これが避雷器の性能を劣化させていくのです。一度設置したら、半永久的に雷サージから被保護側の機器を保護できると思われがちですが、避雷器は寿命のある機器です。避雷器の性能を維持していくためには、定期的にその保守・点検が必要です。

なお、被雷の直後にも、その都度、避雷器の性能チェックを行うことが理想ですが、設備の規模が大きくなればなるほど、時間と費用がかかるため、雷シーズンの前後には必ず点検を行うのが現実的な運用のようです。

また、寿命到来の表示機能が組み込まれている避雷器を使うことで、点検作業を軽減するのも一つの方法です。

電圧制限素子として、酸化亜鉛(ZnO)バリスタやダイオードが主に使われます。

図4 にエム・システム技研の電池内蔵形、寿命モニタ機能付 電子機器専用避雷器(形式:MDPA-24を示します。この製品は、ランプの点灯状態で寿命が判断できるため、設備を稼動させたまま手軽に点検作業が行えます。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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