エムエスツデー 2005年6月号

お客様訪問記

秋田地熱エネルギー(株)の設備監視、異常通報装置 として
採用されたWebロガーとPCレコーダ

(株)エム・システム技研 システム技術部

 秋田県南部に位置する湯沢市は、約200km2の面積を有しており、東方は奥羽山脈に連なる栗駒国定公園、西方は出羽丘陵が大きく張り出した山地に囲まれ、南北に貫流する一級河川、雄物川沿いに平坦な盆地を形成する緑豊かな田園地帯です。広大な雄勝平野を背景に農業を基幹産業とし、さらには代表的地場産業として「東北の灘」といわれる酒造業を中心に、家具・工芸などの木工業があります。このほか近年では、積極的な企業誘致に伴い、電気・精密・縫製・製靴などの新規企業の立地が進んでいます。さらに奥地は、栗駒国定公園の一端である、三途川渓谷や泥湯温泉、日本三大霊地の一つである川原毛地獄やつぶ沼など、数々の自然景観と観光資源に恵まれています。今月は、この秋田県湯沢市に秋田地熱エネルギー(株)を訪ね、設備監視およびEメール異常通報用として採用されたWebロガーとPCレコーダについて、同社上の岱蒸気設備管理所 生産部 技術・環境・企画グループ 菅原 勉 様にお話を伺いました。

図1 秋田地熱エネルギー(株)の設備監視と異常通報装置の構成図
図1  秋田地熱エネルギー(株)の設備監視と異常通報装置の構成図 [拡大図]

[エム・システム技研、以下エムと略称]導入の経緯をお教えください。

[菅原]秋田地熱エネルギー(株)は、地下深部から噴出する自然の蒸気を東北電力(株)上の岱地熱発電所に供給する会社です。この地熱発電所は、認可出力28,800kWの発電所で、1994年3月から操業を開始しています。地熱発電は、マグマの熱を利用して電気を作る発電方法であり、化石燃料の燃焼がないため、地球温暖化の原因の一つであるCO2排出量が極めて少ないのが特長です。地下深部には、地熱貯留層と呼ばれる熱水あるいは蒸気の溜まりがあり、井戸を通して地上に噴出してきます。通常、噴出する流体は、熱水と蒸気が混合した二相流の状態で、地上部でも200℃程度の高温です。発電所に隣接する蒸気設備管理所には、地上設備の各所に設けた圧力・温度・流量・水位などのセンサによって得られるほぼすべての情報が光ケーブルを介して送られてきます。これらのデータをもとに、運転状況を把握・監視するとともに、各調節計に適正な制御値をセットし、安定した運転を行うことが秋田地熱エネルギー(株)の主業務です。従来は、記録計を使って圧力・温度・水位などのデータを記録・保存していました。しかし機器の老朽化に併せて記録紙など交換部品の価格高騰もあり、設備のリプレースを検討していました。代理店の(株)アヅマテクノスさんから、WebロガーPCレコーダをご紹介いただき、採用に至った次第です。

図2 上の岱地熱発電所外観図3 現場盤設置状況

[エム]監視システムの概要をお教えください。

[菅原]所内に点在する地上設備のデータは、光ケーブルによって、常に蒸気設備管理所の中央監視室に送られてきます。この中でも最も重要なデータ(蒸気圧・温度・タンク水位・ドレンピット水位)であるアナログ信号32点を2台のPCレコーダ(形式:R1M-GH2)に取り込み、PC上のレコーダソフト(MSR128-V2)によってロギングしています。また省人化の促進に伴い、勤務体系が24時間交代制から休日・夜間は無人になったため、遠隔監視と異常通報ができるロガーとしてWebロガー(形式:TL2W-ER2)を採用し、PCレコーダと併用しています。異常通報はTL2W-ER2が自動的に実施し、詳細データの解析はPCレコーダにて行っています。また、TL2W-ER2およびPCレコーダの各画面は所内LAN経由で、離れたところにある高松地熱事務所でも監視できるようにしました。これにより、中央管理室と高松地熱事務所の2箇所で設備の状態をリアルタイムに監視できるようにしています。

図4 中央監視室図5 Web監視画面

[エム]システムを導入されて、いかがでしたか。

[菅原]従来でも、異常発生時には担当者への音声通報は行っていました。しかし、実際の設備の状況など、詳細情報が得られないため、現場へ急行して記録計のアナログ値を確認し異常状況の把握を行っていました。したがって、異常設備の復旧に時間がかかるのが実情でした。本システムの導入後は、異常発生時にはWeb画面(トレンド画面)を呼び出し、異常発生前後の状況も確認して、迅速に対応できるようになりました。エンジニアリングに関しても、TL2W-ER2の設定を自身で行いました。添付のビルダソフトは項目ごとに整理されているため、簡単に設定できました。時間をかけずに設定・運用ができる点に大変満足しています。今後も同様な設備案件が生じた場合には、検討のうえWebロガー、PCレコーダを採用する方向で考えています。

[エム]お忙しいところ、ありがとうございました。

本稿についての照会先:
 株式会社 エム・システム技研  
 システム技術部 大阪グループ  三ヶ田 晋  
 TEL.06-6659-8200  FAX.06-6659-8510


ページトップへ戻る