2008-2009 計装豆知識
- PoE(IEEE802.3af)/2009.12
- FLEX NETWORK/2009.11
- 汚染度(Pollution Degree)/2009.10
- 設置カテゴリ(Installation Category)/2009.9
- グリーン調達の現状(2)-RoHS指令からREACH規則まで -/2009.8
- グリーン調達の現状(1)-RoHS指令からREACH規則まで -/2009.7
- タイプ“n”防爆構造について(2)/2009.6
- タイプ“n”防爆構造について(1)/2009.5
- 計器用変成器の接地について/2009.4
- MECHATROLINK-III/2009.3
- シールド線と避雷器/2009.2
- ノンインセンディブ防爆規格/2009.1
- MECHATROLINK-II/2008.12
- 白金測温抵抗体のJIS規格/2008.11
- 専用電話回線と避雷器(2)/2008.10
- 専用電話回線と避雷器(1)/2008.9
- CT(Current Transformer)について(2)/2008.8
- CT(Current Transformer)について(1)/2008.7
- 安全保障輸出管理における「該非判定」について/2008.6
- エム・システム技研の環境保全への取組(2)/2008.5
- エム・システム技研の環境保全への取組(1)/2008.4
- 機能安全とIEC規格61508について(4)/2008.3
- 機能安全とIEC規格61508について(3)/2008.2
- 機能安全とIEC規格61508について(2)/2008.1
エムエスツデー 2009年12月号
PoE(IEEE802.3af)
PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブルを使ってEthernet機器に電力を供給するための技術です。Webカメラや無線LANのアクセスポイントなど、天井や壁に設置することが多い機器については、見た目や設置コストの点から省配線の要求が多く、PoEに対応する製品が増えています。
PoEの概要
PoE技術については、IEEE注)が2003年6月にIEEE802.3afとして標準化を行いました。給電スイッチングハブや給電アダプタなど給電側の機器をPSE(Power Sourcing Equipment)と呼び、Webカメラや無線LANのアクセスポイントなど受電側の機器をPD(Powered Device)と呼んでいます。PoEでは、PSE(給電側機器)からLANケーブルを接続する1ポートあたり出力電圧48V(最大57V)、最大15.4Wの出力が可能です。またPSE側にPDの検出機能があるため、どんなEthernet機器に対しても電圧を加えるのではなく、PoE対応の機器に対してだけ給電します。このような理由によって、同一ネットワーク内でのPoE対応機器と非対応機器の混在が可能になっています。
給電方式(Alternative A、Alternative B)
1本のLANケーブルは、8本の絶縁被覆付き銅線が2本ずつ撚り合わされて(ツイストペア)構成されています。10M/100M Ethernetでは、4対のツイストペアのうち2対((1)(2)対、(3)(6)対)をデータ通信用に使用し、残りの2対((4)(5)対、(7)(8)対)は使用されていません。PSE(給電スイッチングハブ)には、通信で使用している2対((1)(2)対と(3)(6)対)に給電電流を重畳させる方式(Alternative A)と未使用の2対((4)(5)対と(7)(8)対)を使って給電を行う方式(Alternative B、図2)の2種類があります。一方、PD(受電側機器)は、AlternativeA、B両方の給電方式に対応するように設計されていますから、PSEの給電方式を意識しなくてもPoE機能が使用できます。
PDの検出方法
表1 消費電力クラス
クラス | 消費電力 | 検出電流 |
0 | 0.44~12.95W | 0~5mA |
1 | 0.44~3.84W | 8~13mA |
2 | 3.84~6.49W | 16~21mA |
3 | 6.49~12.95W | 25~31mA |
4 | 未定 | 35~45mA |
PSEに接続されたEthernet機器がPoEに対応している機器(PD)であることを確認するため、PSEはEthernet機器が接続されると2.8~10Vの範囲で2つの異なる値の電圧を印加し、電流を測定します。PDは内部に検出用として25kΩの抵抗を内蔵しているため、25kΩに対応する電流値が検出されたとき、PDであるとPSEは判断します。
次にPSEは15.5~20.5Vの範囲の電圧を出力し、電流を測定します。検出された電流によってPDが属する消費電力クラス(表1)を識別できるため、PSEが各ポートから給電しているPD全体の最大消費電力を把握することができます。PD検出後は400msで給電が開始され、その後はPDが切断されるまで電力を供給し続けます(図3)。
エム・システム技研の製品例
PoE対応のエム・システム技研製品の1例として、最近お客様からのご注文がとくに多い、PoE/1000BASE-T対応 Ethernet用避雷器(形式:MDCAT)を図4に示します。
注)IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers):米国に本部をもつ電気・電子技術にかかわる標準化団体