エムエスツデー 2022年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 こわいですね。アメリカやスペインの各地では、山火事が頻発しているそうです。オーストラリアでも、森林火災で住処を追われたコアラを助ける活動がテレビ画面に現れて、地球の裏側では地球温暖化による事件が頻発していることを伝えています。そのうえ新型コロナウイルスの感染が再び拡がりを見せ、第7波の感染拡大になるのではないかと心配されています。もうすでに4回目ワクチンを接種した私にも、安心感が得られない情況です。
 一方ウクライナでは、武力で国境を変えようとするロシアの無謀により、世界中が天然ガスの不足に見舞われています。すでに「地球の温暖化」の現実に直面した世界各国は、火力発電を縮小して再生可能エネルギーの活用が進んでいるようですが、太陽光や風力では、とても火力や原子力のような巨大で安定した電力を補うことができずにいます。このようなことが背景で世界の各国では省電力に力を入れています。国際貿易にあたって取扱い商品の製造に何キロワットアワーが消費されたかを表示することが、義務付けられる方向だと聞きます。これからの製造業では、装置ごとの電力計測が大きなテーマとしてクローズアップしてくることが間違いのないところです。
 エム・システム技研では、すでに電力マルチメータに力を入れており、海外用に形式53U写真1)、国内用に同じく54U2写真2)を商品化してきましたが、これらは受変電設備に組込まれて使用されています。この度エム・システム技研は、小形で高性能な万能の電力変換器「電力マルチタンシマル」(写真3)を完成し、発売しました。この電力マルチタンシマル(形式:M5XWTU)は、手のひらにのる小形サイズであるにもかかわらず、三相電力を入力とし、各相の電圧、電流はもちろんのこと、有効電力、無効電力、力率、周波数、そのほか歪率や2〜31倍の高調波の含有率など、290の計測値を一気に計測することができるもので、Modbus出力によって全計測値を集中監視室に伝送できる優れものです。

写真1 DIN96角 パネル埋込形 電力マルチメータ(形式:53U) 写真1
DIN96角 パネル埋込形 電力マルチメータ
(形式:53U)
写真2 JIS110角 パネル埋込形 電力マルチメータ(形式:54U2)
写真2
JIS110角 パネル埋込形 電力マルチメータ
(形式:54U2)

写真3 電力マルチタンシマル
写真3 電力マルチタンシマル

 「電力マルチタンシマル」の特長を並べると、次のようになります。 
①全電力の計測値290項目を一気にデータ化し、Modbusを用いて伝送して遠隔監視を行います。
②スイッチボックスの隅にも収まる小形化を実現しました。
③電流値の検出にはクランプ形CTセンサを用いますので、既設設備への後付けには非常に便利です。
④三相の電圧と電流の瞬時値を高速のADC(アナログ・デジタル・コンバータ)を用いて
 1サイクルあたり、それぞれ64回デジタル値に変換し、その値を用いて四則演算を行うことで
 500ミリ秒に1回290項目にわたる電力計測値を算出し、出力メモリを書替えています。
⑤ムーアの法則のとおり、電子部品が急速に進歩したお陰で小形化と低コスト化を同時に
 実現しました。
⑥電子回路用電源は、電圧入力の1相を用いるので、電源端子はありません。
⑦出力信号として、ⒶModbus信号のほかⒷ4〜20mA信号 Ⓒ電力積算パルス信号を
 出力するものも標準化しました。

 このようにしてできた「電力マルチタンシマル」ですが、ただできただけでは役に立ちません。そこで、まずその機能、性能を世界中の現場を担当するみなさまに知っていただく必要があります。そのためにそれがどんなものであるかをA4 8ページのカラー印刷で表現することにしました。内部の回路を写真に撮って詳細に解説することにしました。それが「電力マルチタンシマル」のプレゼンマップ写真4)です。これを見た人にどれだけ現物を手に取って見たのに近い感覚をもってもらえるかが、このプレゼンマップのでき栄えというものだと思います。

写真4 【製品紹介とアプリケーション事例】カーボンニュートラルのために生まれた電力マルチタンシマル
写真4 【製品紹介とアプリケーション事例】
カーボンニュートラルのために生まれた電力マルチタンシマル

 次に考えたのは、こんな小さなCPUが、290もある全計測信号を500ミリ秒で演算して出力メモリを書替えるという動作を実感していただくために、Modbus出力の先にパソコンを繋いで、そこに全計測信号が同時に表示されている姿を見ていただき、ご納得いただこうかと考え、「電力マルチタンシマル」のソフトマップを作ることにしました。このソフトマップでは、パソコン画面そのものを見ていただいているのと同じ感覚が得られるように工夫しました。三相の電圧と電流をベクトル図で表し、一目で見えるようにするとともに、そのほかのデータは表形式とし、高調波含有率はバーグラフ形式にして、負荷になっている装置がどんな形で電力を消費しているかを感覚的に見えるように工夫しました。この2つのマップをご覧いただければ工場内で活動している装置類の「消費電力の見える化」が実現することが分かります。

 この2つのプレゼンマップに加えて、実際に動いている装置に取付けて出力信号を実感していただくための動画も作ることにしました。エム・システム技研の京都商品センターで活動している生産設備のいくつかに「電力マルチタンシマル」を取付けて、そのModbus出力のパソコン画面を動画の形で見ていただく企画です。

 以上のような3点セットのほかに、模擬入力を加えてお客様にその動作を実感していただけるデモキットも用意します。「電力マルチタンシマル」の説明会場には、単相の100V ACしかないことを前提に、三相入力用の電力マルチタンシマルに単相の100V ACを計測信号として入力すれば、その出力となるModbusを繋いだパソコン画面がどのように動くかを試していただけるよう工夫しました。これだけ揃えば、きっとお客様には「電力マルチタンシマル」の全貌を充分に把握していただけるのではないか、と考えております。

 さあいかがでしょう。お客様に「電力マルチタンシマル」を身近に経験していただくためのダメ押しに、スモールスタートとしてワンループの「電力マルチタンシマル」を実際にお買いあげ願って、日常活動されているお客様に生産設備の電力監視のご体験をお願いしたいと考えています。

 このようにして、この度発売した「電力マルチタンシマル」を電力計測のセンサとして、お客様の工場の“電力の見える化”を具体化するプロジェクトを進めていただきたいと考えております。

 カーボンニュートラルの必要性が今こそ強く求められています。エム・システム技研は「電力マルチタンシマル」を「電力の見える化プロジェクト」のキーパーツとして提供して行きたいと願っております。その意を汲み取っていただきたいと思い、読者のみなさまに、まずこの『エムエスツデー』誌で「電力マルチタンシマル」をご紹介申しあげました。

 よろしくご検討のほど、お願い申しあげます。

森林火災。消化活動を行うヘリコプター。


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