エムエスツデー 2017年1月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 昨年10月24日の産経新聞の夕刊第5面一杯に、浄瑠璃寺秘仏「吉祥天女像」(重要文化財)が詳細に紹介されていましたが、その見出しの説明文の中に、所在地が「京都府木津川市」とあり、4cm角の地図まで付いていました。よく見ると、「エム・システム技研の京都商品センター」がその地図の中央部にあり、そこから浄瑠璃寺までは車で10数分で行けると思われました。記事の中に吉祥天女像のカラー写真があり、それは秘仏ゆえ厨子に守られ、800年以上の年月を経て色彩を保っているとのことであり、かつその厨子が11月末まで開扉中とありましたので、私は「参拝するなら今だ!」と思い、早速出かけることにしました。京都商品センターに立ち寄った後、現地に向いました。
 姿を現したのは実に美しい庭園でした。中央には大きな池「宝池」があり、西側には本堂、そして池を挟んで東側の石段を登った所には、周りの樹木と見事に調和した三重の塔(内部に薬師如来像を安置)がそびえ立っていました。本堂の中には九体のほぼ等身大の阿弥陀如来座像(国宝)が並び、その中央部脇には開扉された厨子が安置されており、その中に色彩豊かな吉祥天(重文・鎌倉時代)の立ち姿(像高90cm)がありました。ちなみに拝観料は大人1人300円でした。
 この度の見学によって、京都商品センターの周辺には同様の隠されたお寺がいくつもあることが分かる案内書を入手しましたので、私はいずれの日にかこれらのお寺を参拝して回ろうと思っています。

京都府木津川市 浄瑠璃寺

 ところで、上記の京都商品センターには、エム・システム技研が誇る汎用工業計器の変種変量生産を訳なくやってのけるチップマウンタがあります。その脇にある別棟の「京都テクノセンター」には、新製品や設計変更製品の電波障害テストや、各種の性能テストを行うための電波暗室、シールドルームのほかにも、恒温槽を備えた大形の振動試験機が設置してあり、これらは常時フル稼働しています。
 信頼性の高い汎用工業計器が、受注後直ちに生産計画に組み込まれ、短納期を正確に守る生産体制がここに凝縮しています。
 本誌読者の皆様にはぜひ一度これらの現場をご覧いただき、同時に近場にある国宝や重要文化財などの貴重な文化遺産に触れていただきたいと存じます。
 京都商品センターで生産しております製品は、各種の変換器やリモートI/Oなどの汎用工業計器類が主体ですが、最近はIoT用端末の「データマル®」や920MHz帯の電波を用いた計測信号送信器の「くにまる®」など、伝送媒体に電波を用いた無線のリモートI/Oが増えてきています。いよいよ工業計器の世界にも、工場内の各種計測ポイントにあるセンサからの信号を無線を用いて1箇所に集め、集中管理をするのが常識となる時代の到来です。
 ちなみに、一昨年発売した上記の「くにまる®」は「特定小電力無線機」であるため、電波法に基づく申請や登録などの手続きが一切不要であり、かつ、どこでも自由に設置、使用することができます。その上、見通しのよい環境での安定的に送受信できる伝送距離が約1kmと比較的長く、途中に少々の障害物があっても充分に通信が確保されます。
 なお、送受信の中間地点に建物のような大形の障害物がある場合には、920MHz帯の電波は届きにくいですが、「くにまる®」はマルチホップ機能を備えているので、送受信点の双方が見通せる場所に中継用の子機を設置することによって、この問題も解消します。
 また、関係機器の単価も、手軽にご利用いただける価格に設定することができました。ちなみに、親機8.5万円、子機は6.5万円+I/Oボードです。また、親機、子機ともオープンネットワークによる外部機器との接続機能がありますので、上位にはDCS、PLCのほか、ワイヤレス方式の記録計である「タブレットレコーダ®」(「iPad」が代表するタブレットの液晶画面に記録計画面を送信する現場設置形のブラインド記録計)やIoT用端末の「データマル®」が接続でき、下位には各種リモートI/Oのほか、PLCや電力マルチメータなどのModbus対応の機器の信号を吸い上げて伝送することもできる優れものです。何しろ「くにまる®」は無線送受信方式なので、信号配線の工事を必要としません。したがって、子機を現場に取付け、親機を管理事務所に設置してそれぞれの電源を入れるだけで、直ちに現場からの計測信号の伝送が始まります。配線工事費が節約できる上に、配線工事をする期間も不要になり、さらに現場と管理事務所との間に公道などが走っているような場合でも、問題なく通信接続ができます
 このように便利な「くにまる®」ですから、用途は極めて広範囲です。
 たとえばModbusの通信機能をもった記録計に「くにまる®」の親機を接続すると、この「くにまる®」のネットワークに入力された全ての現場の計測信号が入力信号となった記録計が誕生します。もちろん「タブレットレコーダ®」に接続して、全ての現場の計測値を持ち歩ける記録計画面として利用することも得意業の一つです。
 工場内の生産プロセスを担うプラントの集中管理と制御は、歴史と伝統に守られた計装方式が確立されていて、DCSやPLCによって当然のように自動運転が行われています。しかしその運転を支える電力の受配電設備やコンプレッサ、ボイラ、排水処理設備等々の管理には、未だに人手による巡回監視と手書きメンテナンスが多く見受けられます。これらユーティリティと呼ばれる工場設備の集中管理には、この「くにまる®」が大活躍をするものと確信しております。

920MHz帯マルチホップ無線ネットワーク くにまる® システム構成図

 最近になって「IoT」という言葉をよく耳にするようになりました。ご存じのようにこれは「Internet of Things」の頭文字を取ったもので、何でもインターネットに接続して桁違いの利便性を追求しようとするものです。自宅にある家電製品を遠隔から(たとえば携帯中のスマホから)ONーOFFしようとするだけのもののように思われている向きもあるように思いますが、実際には、人手のかかる水道メータやガスメータの検針作業などを無線に取って代わらせようとするもののように見えます。
 計測データ信号の発信には1GHz以下(たとえば920MHz)の電波の特定小電力無線を用いて数キロメートル離れたアクセスポイントに受信させ、それをインターネットを経由して集約した後、それらを管理する企業体がコンピュータを用いて最終的には料金回収するまでのシステムを構築する例がすでに示されています。この場合、無線の送信モジュールは単価が500円くらいといわれているため、世界的に普及するのにはそれほど時間はかからないだろうと思われます。
 ここで用いられる通信方式はLPWA(Low Power Wide Area)通信方式と呼ばれていて、すでに以下の3つのグループが活動を活発化させているとの新聞記事を見つけました。

・「LoRaWAN」規格グループ
  ソフトバンク(日)、セムテック(米)、シスコシステムズ(米)
・「SIGFOX」規格グループ
  NTTドコモ(日)、シグフォックス(仏)、ドイツテレコム(独)、テレフォニカ(西)
・「NB-IoT」規格グループ
  KDDI(日)、エリクソン(スウェーデン)、ファーウェイ(中)、インテル(米)

 計装の世界はPA(プロセスオートメーション)に始まってFA(ファクトリーオートメーション)からBA(ビルオートメーション)に続き、CA(シティオートメーション)へと拡がってきているとみれば、そんなに驚くほどのことではないのかもしれません。
 エム・システム技研はこのような世界情勢をしっかり観察し、次なるブルーオーシャンに向けておもしろい企画を進めて参りたいと考えております。
 読者の皆様には、これから大きく変化する世界を、エム・システム技研と共にぜひ楽しんでいただきたいと存じます。

導入前電波試験を無料でお受けしています。

(2017年1月)


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