エム・システム技研の
BAよもやま話

第7回 IoT、クラウドとAI活用による新しい省エネ

(株)エム・システム技研 顧問 富田 俊郎

はじめに

国家施策として進めるSociety 5.0の施策の一つとして2050年までにカーボンニュートラルの達成目標があります。その中でも重要な施策の一つとして、より一層の商用分野および産業分野における省エネの推進が期待されています。
BA分野でも従来の単一ビルの省エネからビル群としての省エネやビル連携および都市全体としての省エネなど従来とは次元の異なるレベルの省エネの達成を求められており、クラウド連携の広範囲に統合化された省エネが期待されています。そのためのキーテクノロジーとしてIoTやクラウドおよびAIを応用した新しいBAの統合制御が求められています。

ビッグデータを活用したIoTとAIによる省エネの例

IoTデバイスで膨大なデータをリアルタイムに収集しクラウドAIで分析し、分析結果をリアルタイムで表示して改善する複合施設の例(図1)を紹介します。この複合施設はオフィス、レストランおよびグリーン温室を備えています。グリーン化には大変積極的なオーナーでしたがどこに無駄があるかの深堀ができず、ある一定の省エネはできていましたがネットゼロあるいはネットプラスを希望されていたためその実現について提案し施工したものです。

図1  複合施設の例

図1 複合施設の例

無線のIoTセンサを設置しリアルタイムでビッグデータを収集し解析したところ、面白い結果が出ました(図2)。IoTで詳細連続的に測定することにより設備状態や無駄に稼働している機器や人のいないはずの休日に誰かが出勤していたため従来気が付かなかったエネルギー消費が次々に判明しました。

図2  収集したデータの分析結果

図2 収集したデータの分析結果

社長は異常検出のアラームを自らチェックし全体の稼働状態を手元のスマートフォンで監視できるため、総務の事務職員で充分扱えるものとなり専門の要員は不要となりました。削減結果は図3に示すように25%程度の省エネを達成することができました。

図3  運転コストの削減結果

図3 運転コストの削減結果

コンビニなどマルチサイトの省エネにAI活用の例

マルチサイトの総合省エネもAIを活用すると拠点を多数有するコンビニの総店舗の総合省エネで有効な制御が可能となります。図4にIoTセンサとクラウドAIシステムの構成例を示します。図5はリファレンス用のコンビニ店を設定してリアルタイムで比較している例です。
例えば国内に1,000店舗がある場合にコンビニの構成はほとんど同じですから、全店舗の消費エネルギーをオンラインで比較して省エネ改善の可能性があるコンビニ店を抽出することができます。そのコンビニ店にリファレンスと同等レベルのオペレーション改善指示を出すことができます。

図4  IoTセンサとクラウドAIシステムの構成

図4 IoTセンサとクラウドAIシステムの構成

図5  コンビニの省エネ店舗間リアルタイム比較の例

図5 コンビニの省エネ店舗間リアルタイム比較の例

今回の例はコンビニですが、大学などのように大きなサイトで多数の施設がある場合や国内で分散するビル群の管理やグローバル企業の世界に製造拠点が多数ある場合にも効果的です。

【コラム】BA分野でIoTとクラウドAI活用のキーポイント

1. BA経験者が先進のIT技術を活用する

2. ビル単位から設備単位の詳細データ測定の実現

3. ビッグデータ分析からデバイスを自動的に見つける

4. AIで設備故障の予知保全で稼働コストの削減

5. IoT機器は世界標準化と長期供給保証のあるものを選択